肝(きも)の冷える話

アルコールを飲まない人も、肝炎になる。

飲まなくても点(とも)る危険信号。

「京都に行こうか」。十数年ぶりに妻をデートに誘った。つき合っていた頃、よく二人で出かけた。酒を嗜まない妻とのデートは、甘味処めぐりがお決まりコースだった。当時はそんなところも可愛かった。などと、甘い感傷にひたりながら顔をあげると、そこには、昔日の面影いずこへやらの風情の妻が座っている。咄嗟に、数日前に目にした記事を思い出した。

「お前みたいな下戸でも、
 肝硬変や肝癌になるらしいぞ」

甘いものの摂りすぎや偏った食生活をしているとやばいらしい、と告げると。いい加減な受け売りでしょ。肝臓を悪くするのは、あなたみたいな酒呑みよ。人のこと棚に上げて…云々。止める隙を与えないほどの口撃を受けた。しかし、こうも頭ごなしに否定されては、腹も立つ。帰宅後、反論すべく調べてみた。

「酒を飲まない人に起こる脂肪肝は、進行するとやがて10 人に1 人が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)になる」とあるではないか。肥満や糖尿病、高脂血症、高血圧といったメタボリックシンドロームを下地にして起こる。生活習慣病を原因として肝臓に脂肪がたまると、そこから炎症を増幅させるタンパク質が分泌され、肝炎になるらしい。しかも、NASH の約半数は進行性で、肝硬変や肝癌になる危険性があるという。なんでも無症状のまま進行するのだとか。気づいたときには、それこそ危険信号が点滅していかねない。

口で言うよりも、証拠はさりげなく突きつける方が、いいだろう。これをプリントアウトして、テーブルの上にでも置いておくか。

監修:帝京大学医学部内科 主任教授 滝川 一 先生